2015年11月06日

「流暢」は話し手の目指すところ?


こんにちは、高津和彦です。

ベストスピーカー/ベストプレゼンの受講生から頻繁に聞くこと。
「『流暢』に話せるようになりたいんです」。
今回はこれについて考察します。

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自分のなりたい姿。
それは「流暢に話せること」と言う人が結構いる。

スラスラ話したい。
スムーズに話したい。
淀みなく話したい。

これらみんな、流暢と同じイメージだ。


確かに「立て板に水」という言葉もある。

しかしこれは僕は絶対に奨めない。
これを目標にしてはいけない。

なぜか?

"流暢"とは話す人を横から眺めた姿であって、話すの本質「伝わるか?」
の視点から見ると、どうでもいいことなのである。

しかし世間では「流暢・スムーズが目標」が蔓延している。

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先日、ある専門学校講師、Aさんがベストスピーカーセミナー
聞き手に伝えてわからせる講師力・レクチャー能力獲得セミナー
を受講された。


「流暢に話さねばならない」と、最初に目標を言ってくれた。

ちょっと気負いがある話し方。
確かに流暢では全然ない。
だが内容はしっかりと把握できる。

なぜそんな話し方になるのだろうか。

Aさん曰く、
「生徒さんを教える時は、専門用語がたくさん出てくるから、
わかってもらおうとすると単語ごとについ力が入ってしまう」と。

それを上司に指摘されて、
「もっと流暢にしゃべれるようになるまで練習しろ」
と言われているという。


しかし。

「むえんせきせいほう ひかくさんけいかがくちょうみりょう
ふしようのかこうしょくひん」

こんなお経みたいな流暢な発声が耳に聞こえてきて、それを瞬時に、
(その後の言葉もどんどん流暢に耳に流れてくるから本当に即座に)

ああ、それは、
「無塩せき製法・非核酸系化学調味料不使用の加工食品」
だとわかる?

これを一度耳で聞いて、音声だけで瞬時に理解できる人はいない。

専門家でもパッと見て、「えっ?!ちょっと待って!」
と立ち止まらなきゃ理解できませんよね。


僕はいつも言っているが、耳で聞く漢字の瞬時理解力は4文字熟語まで。

例えば、
「せんもんがっこう」まで。

それ以上になると一瞬うろたえる。

「せんもんがっこうこうし」

それは瞬間、
講師?
公私?
行使?
が浮かび、それを即座に判断して正解を出さねばならないから。


話し言葉では絶対に4字まで。

それ以上は、「間」を取る。

助詞を入れる。「専門学校の講師」というふうに。


そもそも「無塩せき製法・非核酸系化学調味料不使用の加工食品」は書き言葉の文章。
耳で聞かせて分かる「話し言葉」ではない。

分からせようとすると、いくら区切って話したとしても分かるわけはない。

「無塩せき製法で、この製法は後で説明しますが、
核酸が原料となる化学調味料は、使っていないという、
そんな加工食品、おわかりですか〜?」

できるだけ和語、訓読みの言葉で説明すると理解されるのだ。

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僕はその生徒さんに言った。

「あなたの言っていることは正しい。僕の名前を出してもいいから、
上司に考え方が間違っていると言ってあげて」と。

Aさんの眼はうるんでいた。
posted by パブリックスピーキング・トレーナー高津和彦 at 17:00| 話し方

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